他人の評価より、自分が乗りたいバイクを選べばいい
バイクの世界には、なぜか「上下」をつけたがる人がいます。大型バイクに乗っている方が偉い。排気量が大きい方が上。馬力が高い方がすごい。装備が多い方が価値がある。SNSやYouTubeを見ていても、そんな空気を感じることがあります。
でも、本当にそうでしょうか。私は、バイクという趣味にそんな序列は必要ないと思っています。
排気量は「偉さ」の数字ではない
250cc、400cc、650cc、900cc、1000cc。排気量が違えば、当然ながら性格も変わります。大排気量車には余裕のあるトルクや高速巡航性能があります。一方で、小排気量車には軽さや扱いやすさがあり、街中やワインディングで気軽に楽しめる魅力があります。
ところが、ときどき排気量そのものを「格」のように扱う人がいます。「大型免許を持っているなら大型に乗ればいい」「400ccじゃ物足りない」「せっかくなら1000ccにした方がいい」。でも、それはその人の価値観です。大型免許を持っていても400ccを選ぶ人はいるし、1000ccに乗れる人が650ccを選んでもいい。本人がそのバイクを気に入っているのであれば、それで話は終わりです。

150馬力あれば70馬力より偉いのか
馬力の話も同じです。「このバイクは150馬力ある」「こっちは70馬力しかない」。スペックとして比較することには意味があります。しかし、それをそのままバイクの優劣にするのは違うと思います。
公道で常に150馬力を使い切って走るわけではありません。むしろ、70馬力くらいのバイクでアクセルをしっかり開けられる方が楽しいと感じる人もいます。逆に、アクセルを少し開けただけで強烈に加速する大排気量車を楽しいと感じる人もいます。どちらが正しいわけでもありません。単純に好みが違うだけです。
「その値段なら別のバイクが買える」は余計なお世話
バイクの話でよく見かけるのが、「その値段を出すなら、もっと馬力のあるバイクが買える」という意見です。確かに、価格だけで比較すればそういう車種もあるでしょう。でも、バイクを買う理由は馬力だけではありません。
デザインが好き。エンジンのフィーリングが好き。排気音が好き。サイズ感がちょうどいい。メーカーが好き。昔から憧れていた。そんな理由で選ぶ人もいます。むしろ趣味の乗り物なのだから、それでいいのではないでしょうか。
コストパフォーマンスだけで選ぶなら、そもそもバイクという趣味自体がかなり非効率です。雨が降れば濡れる。真夏は暑い。冬は寒い。荷物もそれほど積めない。それでも乗りたいから乗る。そこに合理性だけを持ち込んでも仕方ありません。

電子制御が多ければ楽しいわけでもない
最近のバイクは本当に高機能です。クイックシフター、クルーズコントロール、ライディングモード、トラクションコントロール、IMU、電子制御サスペンション。便利な装備はたくさんあります。
もちろん、私自身も便利な装備は魅力だと思います。ただ、だからといって装備の少ないバイクが劣っているわけではありません。シンプルだからこそ楽しいバイクもあります。クラッチを握ってシフトアップする。自分でアクセルを合わせる。余計なものがない。そういう昔ながらの操作感を楽しみたい人もいます。
便利さを求める人もいれば、不便さまで含めて楽しむ人もいる。趣味とは、そういうものです。

見た目で選んで何が悪い
そしてバイクでは、見た目も非常に重要です。スペック表では他のバイクに負けている。装備も少ない。価格も少し高い。それでも「こっちの方がカッコいい」と思ったなら、それは十分な購入理由です。
バイクを停めて、少し離れた場所から眺める。ツーリング先で何枚も写真を撮る。駐車場に戻ってきたときに、自分のバイクを見てちょっと嬉しくなる。走り終わって離れるとき、振り返ってもう一度見る。これもバイクの楽しさです。むしろ趣味の世界では、そういう感情の方が大事だったりします。
自分の価値観を他人に押しつける必要はない
問題なのは、自分の好みを他人の正解にしてしまうことです。大型が好きなら大型に乗ればいい。速いバイクが好きならハイパワーなバイクに乗ればいい。軽いバイクが好きなら軽いバイクに乗ればいい。旧車が好きなら旧車に乗ればいい。最新装備が好きなら最新モデルに乗ればいい。それでいいはずです。
「自分なら買わない」。これはただの感想です。でも、「そんなバイクを買う意味が分からない」となると、それは自分の価値観を他人に押しつけているだけです。その人には、その人なりの理由があります。

バイクは他人に評価してもらうために乗るものではない
SNSがあると、どうしても他人の反応が気になります。「そのバイクいいですね」「大型すごいですね」「速そうですね」。そう言われれば嬉しいでしょう。でも、本来バイクは他人に認めてもらうために乗るものではないと思います。
乗っている本人が楽しいか。所有していて満足できるか。また乗りたいと思えるか。それが一番大切です。他人から高評価をもらっても、自分が楽しくなければ意味がありません。逆に、他人から何と言われようと、自分がそのバイクを気に入っているなら、それでいい。
バイクは自己満足でいい
「自己満足」という言葉は、ときどき悪い意味で使われます。でも趣味なんて、基本的には自己満足です。高級時計も、カメラも、車も、釣り道具も、オーディオも同じです。必要最低限だけを考えれば、もっと安いものはいくらでもあります。
それでも、自分が気に入ったものを選ぶ。自分がそのバイクに乗ったときに、「やっぱりこれを選んでよかった」と思えるかどうか。結局、それが一番大切なのだと思います。
バイクに絶対的な上下なんてありません。大型だから偉いわけでもない。小排気量だから初心者向けというわけでもない。高性能だから、その人にとって最高とも限らない。100人いれば、100通りの楽しみ方があります。
だから私は、「どのバイクが一番いいですか?」と聞かれても、簡単には答えられません。その人が何を求めていて、何に魅力を感じるのか。そこが分からなければ答えようがないからです。
一番いいバイクではなく、「自分が一番乗りたいバイク」を選ぶ。それで十分だと思います。